2015/08/03

kicker掲載のノイシュテッター記事

kicker Ausgabe 064/2015 vom 03.08.2015
kicker 2015年8月3日発売 064/2015号

ノイシュテッターという人間

スケープゴートにされることはしょっちゅうで、そのプレースタイルは賛否両論を呼ぶ。それでもこのFCシャルケ04のプロ選手は、足が地に着いていて、かつ冒険心にあふれているのだった。

写真キャプション:新しいヘアスタイル、新たなモチベーション(テストマッチのクラーゲンフルト戦参照)、子どもたちとの新しいプロジェクト。ロマン・ノイシュテッターにはまだたくさんの目標がある。

ロマン・ノイシュテッターは昨日のことのように覚えているという――もう2年近く前の話だ。「あれはホームでのアウグスブルク戦。内田篤人へダイアゴナルボールを出したら、タッチラインを割ってしまった。するとささやき合う声がスタンドから聞こえてきた。その直後の似た状況で、僕はまたロングボールを蹴った。それが長すぎてゴールラインを割ると、スタンドのささやき声はさらに大きくなった」。ノイシュテッターはそのミニエピソードをこう締めくくった。「それでも、僕は3本めのボールをもう一度内田に出した――するとそのボールは届いて、そこからゴールが生まれたというわけ」。観客のささやきには気付いていたが、ノイシュテッターは動揺しなかったのだ。「己のやり方に忠実でありたい」と彼はきっぱり言う。たとえこんな観客の声をまともに聞かされることがあろうと――「ノイシュテッターの野郎め!」

このシャルケのディフェンダーが批判にさらされることはしょっちゅうだ。定着した感すらある。「なんでそうなのかはうまく説明できないけど」本人は頭をひねり、「自分のプレースタイルは、一部の人にすぐには理解されないのかもしれない。派手なプレーヤーでもなければ、ショーをお見せするわけでもないし。僕は守備的ミッドフィールダーで、1シーズンに20ゴール決めたり40アシストするのが仕事ではない。まず第一に、ゲームを整え、守備と攻撃のバランスを作り出すこと」。それには「ボールが全く来ないこともあるスペースを埋める」のも含まれるという。「これはあまり目立たないことかもしれない。それで相手にかわされたりすれば、あまり良くは思われないだろうし。でも、チームとしてしっかりコンパクトにプレーしていないと、中盤でボールを奪うのは難しくなるもので――特に数的不利の状況では」。ノイシュテッターは「外部からの批判をあまり深刻に受け止めすぎないように」しており、自分を「とても自己批判的」だと言う。

27歳の彼が対話のできる人間であることは間違いない。先月、サポーター事件があったオーストリアのトレーニングキャンプでそれは証明済みだ。フェンスの向こう側にいたグループから個人的に侮辱を受けるはめになったのだが、ノイシュテッターが近付いて行くと、その無礼者たちは急におとなしくなった。口汚い言葉を吐かれて「驚いた。その練習で僕は一番いい数値を出している中にいたんだから――その時点ではそう見えていなかったのかもしれないけど」とベテラン選手の彼は言う。「でも、チームがすぐ僕の味方についてくれたことには驚かなかった。こういうことがあると、仲がさらに深まる。自分自身にも他の人にも信頼が生まれるから」

元グラートバッハの彼のプレースタイルには賛否両論があるのかもしれないが、模範的なプロ選手の姿を体現していることに議論の余地はない。「実に頼りになるチームの支柱。彼の言葉には非常に重みがある」と監督のアンドレ・ブライテンライターは言う。「ロマンは常に一生懸命で協力的。それにとても性格がいい」とはホルスト・ヘルトディレクターの評だ。「彼はチーム内で高く評価されている。これまでのどの監督にも、私にも。昨シーズンは、我々みんなと同じく彼にとってもなかなか大変だったが、ほとんどの試合に出場してきた。彼が負傷離脱したのはいつだったかまったく思い出せない」。ノイシュテッター自身もこう言う。「特にここ3シーズンはほとんどの試合に出ている。これはやってきたことの証明でもある。でもそこを評価してくれる人がもっと増えるとうれしい」

ノイシュテッターは秘訣を明かした。「心掛けているのはいい食事と早寝。それとストレッチはよくやっている。個人トレーナーをつけていて、オフの日も一緒にトレーニング」。マッサージ台にのんびり寝そべっているプロサッカー選手のイメージは、彼にはまったく当てはまらない。「マッサージは避けるようにしていて。僕には合っていないのか、翌々日までしっくりこないから。いつも少し張っている状態がよくて、負荷をかけている方が自分の体には効いている感じがする。サウナとかは僕には効果ゼロ」。その代わりに「1年半前にヨガを始めた。ストレッチ、深呼吸、スタビライゼーションを重視して」

ピッチを離れたノイシュテッターはどんな人間なのだろうか。彼はウクライナで生まれ、その後キルギスで育ち、4歳でドイツに来た。落ち着いた今は、足が地に着いていて、かつ冒険心にあふれている。「僕は何にでもオープンだし、いろいろやってみるのが好き。旅行で行くのはいつも変わったところで」と、このオフに経験した5週間の世界旅行について熱く語った。「インドのムンバイにいて、それから内田篤人に会いに東京に行ったんだけど、息をのむほどすばらしかった。彼以上の案内役は望めないだろうね」。そして旅はハワイへと続く。ビーチリゾート?とんでもない!地上の楽園に行ったのだ。「火山をよじ登ったり、星を見に山へ行ったり」。元同僚のジャーメイン・ジョーンズをロサンゼルスに訪ね、一緒に「ヘビのいる荒野にテントを張った。次回はぜひアフリカでサファリを体験したいし、サメとダイビングもしたい。おりの中で!あ、おりに入るのはこっちね、サメじゃなくて」

ノイシュテッターはおりの中で生活せざるを得ない人間も見た――貧困というおりの中で。インドのチャリティー・プロジェクト "Anstrengung United" でのことだ。インドでプレーしている元レーバークーゼンの選手、マヌエル・フリードリヒが「紹介してくれて。僕は単純にいいことがしたいと思って、何ができるかその組織に問い合わせた」とノイシュテッター。「おもちゃやプレゼントをたくさん詰め込んで、子どもたちに持って行った。ユニフォームやサッカーボールもね。素敵な一日を過ごしてもらおうと、一緒に遊んだり、絵を描いたりした」

ムンバイの生活環境は印象的だったという。「向こうの状況は僕らが知っているそれとはまったく違う。人々が道ばたに寝転がって眠っていて、その上を人々が行き交う。あれを見ると、自分の生活の価値がよりわかるんじゃないかな」。「その組織とは連絡を取り続けて」いくつもりで、「これからも活動を行うことはじゅうぶん考え」られるという。「いつか小さなスポーツスクールを開くとかね」。そして子どもたちがパスを失敗したら、ノイシュテッターという人間はこう声をかけるのだろう。大丈夫、次もまたそれをやってみよう、己のやり方に忠実であれ、と――。彼がホームでのアウグスブルク戦でやったように。
Toni Lieto


※このブログでのみ公開するという条件で翻訳・掲載の許可を頂いているので転載はしないで下さい